Columnコラム

会社の顔色

会社や組織のことを「法人」と言う。だからというのではないけれど、人間と同じように会社にも“存在”があると思う。うまくは言えないが一種の佇まいのようなもの。だから独自のにおいや顔もある。そこにいる人たちから醸し出されるものだろうか・・そんなことを感じる時もある。

ずっと前に少し関わったある会社の話。金融業なので仕入れ商品は資金、すなわちお金である。
資金を大量にそして安く、借りれば借りるほど貸出の利ザヤが取れて儲かる。なので資金調達は業務の要であった。

その会社で財務部長が交代した。新任者は銀行から来た人である。ゴルフ焼けしたつやつやした肌の、いかにもやり手というその人は、前任者とは違うことをどんどん始めた。

それまでは複数の銀行と広く浅く付き合っていたが、新部長はその反対に、他はすべて手を切り一行だけと深く付き合うようになった。
そして、借入に為替連動デリバティブを付けて金利を有利にする方法にした。
その甲斐あって調達コストはどんどん下がり、目に見える成果がすぐに表れた。みんなが財務部長を褒めたたえた。

ところが突然、為替の潮目が変わり、急激な円高が進んできた。その調達スキームは含み損を抱えるようになり、それに歩調を合わせるように財務部長の顔がどんどん白くなってきたのである。ロウソクのように白く、そして円高が進むと青くなっていく・・。資金繰りに心配があると、顔に出るというのは本当だとその時に知った。

これはまた別の会社の思い出。株式上場を目指しているということで、まずは相談のため訪問した時のこと。
ビルの中に通されて入った時に感じる雰囲気が、どんよりとして覇気がない。かなり待たされた後に社長が出てきたが顔色が悪い。体調が悪いのかと思うくらい青白い。

簡単なさわりのトークだけして、皆でランチを一緒にすることになった。近くの蕎麦屋で、落ち着きなく蕎麦をすする社長。結局その会社とは縁はなく、それきりになったが、その時の様子だけはなぜか覚えている。